1. ……すまない。必ず復讐は果たす。 だから、もう少し待っていてくれ。
  2. お前たちを死に追いやった者を暴き…… どんな形であれ、必ず果たす。だから……
  3. おい。
  4. グレ……いや、フェリクスか。 ……見苦しいところを見せたな。
  5. もう20年も付き合ってきた相手に、 今更、見苦しいも何もあるものか。
  6. 皆もすっかり寝静まった頃だというのに 一人で礼拝堂に籠もって何をしていた。
  7. お前の声が聞こえて何事かと思ったが、 白昼夢でも見ていたのか。
  8. ……お前には、隠したところで無駄か。
  9. 白昼夢……のようなものだ。あの日死んだ 者たちが、昼夜を問わず立ち現れてくる。
  10. もしあの事件に帝国が関わっていたのなら、 皇帝がそれを黙認していたのなら……
  11. ……あの日の死者と同じ最期を与えろと 叫んでいる。胸をえぐり、首をはねて……。
  12. いつからだ。 そんなものを見るようになったのは。
  13. 6年前から……だが、 声を聞いたのは4年前……初陣の時だ。
  14. 敵軍の将の顔を、俺は知っていた。 ……ダスカーで見た顔だった。
  15. 奴の首を落とした時、皆が、声を上げて 笑ったんだ。泣いて苦しんでいた者たちが。
  16. ……納得はできんが、 まあいろいろと腑には落ちた。
  17. だがな、兄上も先王陛下も、他の者たちも そうしてお前を責め苛んだりするものか。
  18. お前が安穏と生きていくのを 許していないのは、他でもないお前自身だ。
  19. ……誰が俺を許すと言おうと、 俺は死ぬまで自分を許すつもりはない。
  20. 安心しろ、お前にそんな器用な芸当が できるなど、俺は毛ほども期待していない。
  21. だが、お前は皆を導く国王だ。 お前が惑えば、皆も行くべき道を失う。
  22. その苛烈な復讐心は、胸にしまっておけ。 それは俺だけが知っていればいいものだ。
  23. ……要するに、弱音を吐くなら お前の前だけにしろ、ということか?
  24. フン……。
  25. ……俺が畜生に堕さずにいられるのは、 こうしてお前が受け止めてくれるからだ。
  26. ルーグにとってのキーフォンが、父上に とってのロドリグがそうだったように……
  27. これからも俺の右腕として 側にいてくれ、フェリクス。
  28. ……右腕、か。 まあ、悪くない響きだ。ならば……
  29. ……! おいフェリクス、いきなり何を……
  30. 右腕としての責を果たさせてもらう。まず、 休み方を知らん王を寝台に放り込まねばな。
  31. なあ……俺を背負って運ぶつもりか? 無茶はするな。足が床についたまま……
  32. 黙れ、貴様が馬鹿でかく育ったせいだ! この筋肉の塊め、運びにくいにも程がある。
  33. ……昔もこんなことがあったな。 あの時は足を挫いたお前を、俺が運んだ。
  34. ああ、あれは良い訓練になっただろう? 今度は俺の訓練に付き合え、ディミトリ。
  35. くく……ああ、そうだな。