1. おっ、イグナーツ。 やっぱりここにいたか。捜したんだぜ。
  2. ……し、シルヴァンくん。 すみません、ボクに何か用ですか?
  3. ああ、ちょっとな……あ、もしかして 絵を描いてたのか? 邪魔しちまったかな。
  4. い、いえ。大丈夫ですよ。 何でしょうか……?
  5. ちょっとこの絵を見てくれないか? 俺の実家で埃を被ってたものなんだが……。
  6. この絵……ファーガスの絵画にしては、 珍しい作風ですね。帝国の画家の作かな。
  7. 確かに、技法や画風もファーガスじゃ あまり見ないような代物だよな。
  8. 父上の前妻は帝国貴族の娘だったから、 その人が持ち込んだのかもしれない。
  9. そうだったんですね。初耳です。 ……それにしても、すごく綺麗な絵ですね。
  10. ははっ、イグナーツもそう思うか? 本当に綺麗な人だよなあ。この女の人!
  11. ボクはその人のことを言ったんじゃ…… いや、確かに綺麗な人ですけど……。
  12. どことなくレア様のような…… とても優しそうな顔をした女性ですよね。
  13. ……しかし、この人がどこの誰なのか、 実在する人なのかもわからないんだ。
  14. なるほど。ボクに聞きたいことというのは、 もしかしてこの女性の正体……ですか?
  15. ああ。すごく綺麗な絵だったせいか 昔見た時から、頭の隅に引っかかっててね。
  16. お前が絵画に詳しいって話を聞いてから、 機会があったら尋ねたいと思ってたんだよ。
  17. あ、あまり期待しないでくださいよ? ボクにもわからないことはありますから。
  18. ……けれど、女性の正体は気になりますし、 ボクなりに少し調べてみようと思います。
  19. 本当か? 助かるぜ、イグナーツ。 俺だけじゃどうにもならなかったからなあ!
  20. 教会の関係者ならまだしも、王国貴族って こう……よく言えばその、武芸一辺倒だろ?
  21. そんな国柄なもんだから、美術書の類いを 手に入れようと思っても一苦労でね。
  22. あはは……宗教美術は発達していますけど、 世俗の美術については何も言えないですね。
  23. でもこの絵って、それこそセイロス教に 関係した絵画なんじゃないでしょうか?
  24. え、そうなのか? その割には、 そういう意匠が見受けられないような……
  25. 君も知っていると思いますが、 経典や伝説に出てくる人物を描く時は……
  26. その人物を表すものや、関係するものが 同じ画面に描かれる場合が多いんです。
  27. 聖セイロスの剣とか、聖セスリーンの 魚とかだろ? 特に見当たらないが……
  28. そうですね……でもこの鳥とか、不自然な くらいに強調されているような気がします。
  29. 確かに言われてみれば……けど、こんな鳥を 象徴としてる人はいたかな。聖マクイルか?
  30. しかし聖マクイルは男だったそうだし、 ちょっと違うような気もするな……。
  31. あの……シルヴァンくん、詳しいんですね。 ごめんなさい。ちょっと意外でした。
  32. 正直なところ、ボクなんかとは 全然違う世界の人だと思ってましたよ……。
  33. イグナーツ、俺を誰だと思ってるんだ。 俺はファーガス一、芸術を解する男だぜ?
  34. まあ、勉強しようと思ったきっかけは 女の子との話の種になるからなんだがな!
  35. あ、あはは……。ごめんなさい…… やっぱり、違う世界の人だったかも……。