- すでに皆も聞いていると思うが、
南部のローベ家が帝国への恭順を表明した。
- 先んじて、ローベ領の城主ロナート卿が
大司教追討のため打って出たとも聞く。
- 周辺の諸侯を通して、あらかじめ
手を打ったつもりではいましたが……。
- ……ロナート卿が、教団の受け入れを
看過できずに先走ったのかもしれませんね。
- そんな……。
- もしお前が、今からでもガスパール領に
戻りたいと言うのなら……止めはしない。
- ……お気遣いありがとうございます。
でも……今の僕は、王家の騎士ですから。
- で、ローベ家とロナート卿の兵、
それから帝国軍の動きはどうなっている?
- 今のところローベ家に目立った動きはない。
恐らく、打って出る気はないのだろう。
- 一方ロナート卿はガスパール城より進発し、
ゲライント領に攻めかかっているそうだ。
- 帝国軍の先遣隊は、王国領に侵入。
直接ロナート卿の援護に向かったらしい。
- 帝国の先遣隊……ってことはつまり、
本隊が出てくるかもってことですよね?
- 合流しちゃったら、ちょっとやそっとじゃ
太刀打ちできなくなるんじゃ……。
- ガラテア家からも兵を送っているのですが、
思いのほか敵の動きが速いと聞いています。
- ゲライント領で、上手くロナート卿を
押し返せればよいのですが……。
- このままにはしておけないよな。
一刻も早く救援に向かわないと。
- このままにはしておけないわよね。
一刻も早く救援に向かわないと。
- ああ、そうだな……俺も出よう。
- 陛下……万一があってはなりません。
やはり王都に留まられたほうが……
- その件に関してはもう話し合っただろう、
ドゥドゥー。これは必要な出征だ。
- 俺たちはカロン領から西へと軍を進める。
そこで帝国とロナート卿の兵を討ち払い……
- そのままアリアンロッドに攻め込み、
戦力を失って疲弊したローベ軍を討伐する。
- 制圧後はアリアンロッドに入り、
西部戦線の指揮を執らねばならない。
- 王都には、王家の遠縁であるイヴァン公が
念のため入ってくださっています。
- ギュスタヴ殿もおりますし、
余程のことがない限りは安全でしょう。
- いいんじゃないですか。今後の主戦場は、
アリアンロッド周辺になるんでしょうし。
- だったら、ますます急がないとな。
負けちまったら元も子もない。
- だったら、ますます急がないとね。
負けちゃったら元も子もないもの。
- いつも急な出陣ばかりで、
皆には迷惑をかける。……すまないな。
- 気を遣ってくれるのはありがたいが、
お前が責任を感じることじゃないだろ。
- 気を遣ってくれるのはありがたいけど、
あなたが責任を感じることじゃないでしょ。
- お前と俺たちは王様と配下だが、
その前に仲間だろ。気安く頼れよ。
- あなたと私たちは王様と配下だけど、
その前に仲間でしょ。気安く頼って?
- ……そうだな。
- ああ、それからもう一つ。
実は先日教団から申し入れがあってな。
- セテス殿が妹御と共に、セイロス騎士団の
一部を率いて同行してくださるそうだ。
- セテスさんが?
そりゃ心強いが、どういう風の吹き回しだ?
- セテスさんが?
それは心強いけど、どういう風の吹き回し?
- 俺も詳しい経緯は聞いていないが……
後で、本人に尋ねてみてもいいかもな。