1. すでに皆も聞いていると思うが、 南部のローベ家が帝国への恭順を表明した。
  2. 先んじて、ローベ領の城主ロナート卿が 大司教追討のため打って出たとも聞く。
  3. 周辺の諸侯を通して、あらかじめ 手を打ったつもりではいましたが……。
  4. ……ロナート卿が、教団の受け入れを 看過できずに先走ったのかもしれませんね。
  5. そんな……。
  6. もしお前が、今からでもガスパール領に 戻りたいと言うのなら……止めはしない。
  7. ……お気遣いありがとうございます。 でも……今の僕は、王家の騎士ですから。
  8. で、ローベ家とロナート卿の兵、 それから帝国軍の動きはどうなっている?
  9. 今のところローベ家に目立った動きはない。 恐らく、打って出る気はないのだろう。
  10. 一方ロナート卿はガスパール城より進発し、 ゲライント領に攻めかかっているそうだ。
  11. 帝国軍の先遣隊は、王国領に侵入。 直接ロナート卿の援護に向かったらしい。
  12. 帝国の先遣隊……ってことはつまり、 本隊が出てくるかもってことですよね?
  13. 合流しちゃったら、ちょっとやそっとじゃ 太刀打ちできなくなるんじゃ……。
  14. ガラテア家からも兵を送っているのですが、 思いのほか敵の動きが速いと聞いています。
  15. ゲライント領で、上手くロナート卿を 押し返せればよいのですが……。
  16. このままにはしておけないよな。 一刻も早く救援に向かわないと。
  17. このままにはしておけないわよね。 一刻も早く救援に向かわないと。
  18. ああ、そうだな……俺も出よう。
  19. 陛下……万一があってはなりません。 やはり王都に留まられたほうが……
  20. その件に関してはもう話し合っただろう、 ドゥドゥー。これは必要な出征だ。
  21. 俺たちはカロン領から西へと軍を進める。 そこで帝国とロナート卿の兵を討ち払い……
  22. そのままアリアンロッドに攻め込み、 戦力を失って疲弊したローベ軍を討伐する。
  23. 制圧後はアリアンロッドに入り、 西部戦線の指揮を執らねばならない。
  24. 王都には、王家の遠縁であるイヴァン公が 念のため入ってくださっています。
  25. ギュスタヴ殿もおりますし、 余程のことがない限りは安全でしょう。
  26. いいんじゃないですか。今後の主戦場は、 アリアンロッド周辺になるんでしょうし。
  27. だったら、ますます急がないとな。 負けちまったら元も子もない。
  28. だったら、ますます急がないとね。 負けちゃったら元も子もないもの。
  29. いつも急な出陣ばかりで、 皆には迷惑をかける。……すまないな。
  30. 気を遣ってくれるのはありがたいが、 お前が責任を感じることじゃないだろ。
  31. 気を遣ってくれるのはありがたいけど、 あなたが責任を感じることじゃないでしょ。
  32. お前と俺たちは王様と配下だが、 その前に仲間だろ。気安く頼れよ。
  33. あなたと私たちは王様と配下だけど、 その前に仲間でしょ。気安く頼って?
  34. ……そうだな。
  35. ああ、それからもう一つ。 実は先日教団から申し入れがあってな。
  36. セテス殿が妹御と共に、セイロス騎士団の 一部を率いて同行してくださるそうだ。
  37. セテスさんが? そりゃ心強いが、どういう風の吹き回しだ?
  38. セテスさんが?  それは心強いけど、どういう風の吹き回し?
  39. 俺も詳しい経緯は聞いていないが…… 後で、本人に尋ねてみてもいいかもな。