1. ……陛下、フェルディアの東部郊外に 連邦国軍が現れました。
  2. そうか……思いのほか、早い到着だな。 王国の雪は、俺たちに味方しなかったか。
  3. てっきり、帝国軍の動きと連携して 攻め込んでくると思ってたんですけど……
  4. 西部の状況を確かめる限り、 そういうわけでもなさそうですよね。
  5. 連邦国軍だけで王都を攻め落とすつもり なんでしょうよ。なめられたもんだ。
  6. だが事実、王家の兵の大多数は 西部戦線と北部の治安維持に割かれている。
  7. そもそもそういった状況を作り出すのが、 クロードの策略だったのだろう。
  8. だとしても、彼らの兵力では 王領全域を制圧できるとは思えません。
  9. 仮に我々に勝利できたとしても、 ほんの一時、王都を占拠できる程度です。
  10. ええ、各地の城主と合流して攻め入れば、 何事もなく王都を奪還できるでしょうね。
  11. どうせ、それも何かの策略なのだろう。 王都陥落の他に、真の目的があるはずだ。
  12. ……例えば、中央教会とかな。
  13. ありそうですね。帝国より先に教団を潰して 皇帝陛下に恩を売ろうってか……。
  14. 仮にそうだとすれば、我々が教団を見限れば 彼らと戦わずとも済むのではありませんか。
  15. 彼らを見捨てれば再び国内は割れ、より 多くの流血を招く。そういう話だったろう。
  16. ええ……だからこそ我々も開戦に賛同した。 ですが……
  17. お前の言いたいことはわかる。この戦争で 流れる血のほうが多くなれば、本末転倒だ。
  18. 教団は……多くの者たちを救ってくれた。 行く当てのない者、帰る家のない者……。
  19. ……民も中央教会も、そして未来の民も 同時に救えるのなら最上の結末だろう。
  20. だがどうしても何かを切り捨てなければ ならないのなら、俺が選べる答えは一つだ。
  21. 俺は……ファーガスの王なのだから。
  22. ………………。
  23. 陛下、連邦国軍を迎え撃つならば、 すぐに動くべきかと。ご指示を。
  24. ……まずは奴の真意を確かめなければ 如何ともしがたい、か。
  25. 出陣だ。今はクロードの 茶番に付き合ってやるしかあるまい。
  26. シルヴァン。あまり逸って突出するなよ。 ……するなら敵を薙ぎ払って帰ってこい。
  27. ははは、陛下はいつも無茶を仰る。 ご心配なく。俺、意外と冷静なんですよ。
  28. ……ロドリグ、カムロスの街に使者を送り、 レア様たちに避難の仕度を整えさせてくれ。
  29. 大司教警護の名目で、王都に滞在している セイロス騎士団もそこに合流させる。
  30. おや……セイロス騎士団には、王都防衛に 加勢していただかなくともよいのですか?
  31. 構わない。今は王都から遠ざけておきたい。
  32. かしこまりました。 万一彼らと手切れとなれば、その時は……
  33. ……まだ、何も言うな。 今はただ……この王都を守るのみだ。