1. ふふふ。 待っていたぞ、ペトラ。
  2. フェルディナント、用事、 何か、ありますか?
  3. ああ……こほん。
  4. おお、麗しき君よ、異国より来たりし姫よ♪ 鋭き剣技の、鮮やかなる使い手よ♪
  5. 私と共に、いざ剣の腕を磨かん♪
  6. ………………。
  7. ………………。
  8. ……ど、どうかね? ブリギットの習慣を、実践してみたのだが。
  9. ブリギットの……習慣、ですか?
  10. ああ、つい先日、書物を読んで知ったのだ。
  11. ブリギットでは、王の一族に 何らかのお願いをする時……
  12. 舞い、吟じながら、軽やかに願うと。 なかなか華々しい習慣だな。
  13. ……解せません。ブリギット、 そのような、習慣、ない、ありません。
  14. なに!? いや、しかし……ブリギットでは 歌や舞が重んじられているのだろう?
  15. はい、ブリギット、確かです。 精霊、捧ぐ、歌、舞、あります。
  16. 精霊に、捧ぐ? ということは、王の一族とは関係ない?
  17. ……いえ、わかりました。 それ、誤訳、間違いないです。
  18. ブリギットの王、精霊、加護、願います。 その時、歌い、舞い、願う、します。
  19. 王、願われる、誤る、誤りです。 精霊に、王、願う、正しいです。
  20. 加えて、それ、特別な時のみ。 普通、突然、歌う、舞う、おかしいです。
  21. お、おかしい……。 いや、君の言うとおりではあるのだが……。
  22. ブリギットには、フォドラの常識では測れぬ 奇抜な習慣があるのかもしれないと……。
  23. フェルディナント、ブリギット、 愚か、思う、思っていますか?
  24. と、とんでもない。 いや、これは完全に私の落ち度だ。
  25. 私としたことが、愚かにも書物の記述を 鵜呑みにしてしまうとは……!
  26. あなた、気にする、必要ないです。 本、間違い、よくある、ありますから。
  27. しかし……フォドラの貴族、おかしな人、 書いてある、本、事実、でしたか。
  28. 貴族が、おかしな人!? そんなことが書いてある本があるとは!?
  29. 「フォドラでは、貴族を、“奇人”と呼ぶ」 読みました。奇人、おかしな人、です。
  30. それを言うなら“貴人”であろう! 明らかに間違っているぞ!
  31. 冗談、です、フェルディナント。 わたし、間違い、気づいています。
  32. 奇人、貴人、違う、当然です。 わたし、本、騙される、騙されません。
  33. じょ、冗談!? 一杯食わされたというわけか……。
  34. くっ……もう騙されるのは、お腹一杯だ!
  35. 一杯、食わされ、お腹、一杯? ……見事な技術です!!
  36. い、いや、今のは偶然の産物で……。 まあ、君が喜んでくれる分にはいいが……。